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歯の移植
何かしらの理由で歯を抜かなければならなくなったとします。
その歯が永久歯の場合、後から歯が生えてくる事はありませんから何の処置もしなければ抜けたままになってしまいます。
その時あなたならどうしますか?
抜いた歯を補う治療方法として入れ歯(部分入れ歯)、ブリッジ、インプラント、それと極めて適応は限られますが、自分の歯の移植(自家歯牙移植)という方法があります。
このうち保険で治療する事が可能なものは、インプラント以外の3つの方法です。今回は、その中の歯の移植についてお話しします。
以前は、この歯の移植を保険治療で行うためには、抜かなければいけない歯を抜歯した日と、同じ日に、自分の残された親知らずを移植すると言う、患者さんにとって手術時の体への負担や術後の痛みが相当に強い処置方法でしたが、現在は抜歯すべき歯を抜いた後、傷や痛みが落ち着いてから、親知らずを移植する方法でも保険治療で処置を行えるようになりました。
これは患者さんにとって有益な保険治療の改正だと思います。ただし、この自家歯牙移植は適応したドナー歯が存在しないと行えない処置であり、かつ歯を抜いた後の顎の骨が十分にしっかりしているか、歯肉は健康か、全身状態は健康か、喫煙者ではないか等々、誰でもが行える処置では無い事も特徴の一つと言えます。
移植手術自体は、ドナー歯が健康で理想的な形をした親知らずであれば、保険適応で費用は9000円〜10000円前後(3割負担)で済むこともありますが、術後の根の治療や被せ物の治療費は別途かかります。親知らず以外の、前歯や奥歯を移植する場合は保険適応外となります。
また、抜いてからしばらく放置された場合は、両隣の歯や、咬み合わせの歯が傾斜して動いてくるなど、正常な咬み合わせに戻すには、矯正治療を合わせて行う必要があることも多く、移植手術も含めて保険外治療となります。ご希望の患者さんには、レントゲン検査と説明の上、二次医療機関口腔外科へ紹介させて頂く事も可能です。
下の歯の親知らずを移植した場合、どのような予後を送るようになるのかを研究された論文があります。その研究結果には、結論として
『移植歯は下顎第三大臼歯が、移植歯と受容部の関係では同顎同側あるいは対顎対側への移植が望ましかった。第一大臼歯部が最後方歯になると予知性は低かった』
とあります。
言い方を変えると、右下の親知らずを移植する場合は右下の歯として移植するか、もしくは左上の歯に移植すると予後が良かった。また、移植するならばその歯が1番奥の歯にならない方が望ましいとの事です。参考になりましたでしょうか?
以下は2016年の北海道大学の先生方が研究された論文です。